喉頭がんを疑う6つのポイント
喉頭とはのどぼとけのことです。声帯があって声を出したり、食べ物が肺に入らないように調節しています。
喉頭がんになると現れる症状は
- 一カ月以上声がかれていて治らない。
- のどに異物感があり、場所が一定している。
- 硬い食べ物を飲み込んだ時に痛みがでる。
- 痰に血が混じる。
- 呼吸が苦しい。
- 首にしこりができて大きくなってくる。
これらのうち1つでも当てはまる症状がある場合は耳鼻咽喉科で診察を受けましょう。
また喫煙と飲酒は喉頭がんの発生に関連があります。タバコをたくさん吸われる方や、お酒をたくさん飲まれる方は喉頭がんのリスクが高いため年に一度は耳鼻咽喉科でのチェックをお勧めします。
喉頭がんの検査法
喉頭を詳しく診察するためにはファイバースコープを使用します。お鼻から挿入するため挿入感も強くなく、細いため痛くもありません。
患者さんには「エー」などと発声していただいたり、ほっぺたを膨らませていただいたり、顔の向きを変えていただいて、のど全体を観察します。
喉頭がんを疑うしこりがある時はその一部を取って検査(病理組織検査)に出します。施設によって外来で局所麻酔で行う場合と、入院して全身麻酔で行う場合があります。結果は通常1週間前後でわかります。
癌の大きさを調べるためにMRIを行ったり、首のリンパ節に転移がないか超音波で調べたり、肺などに遠隔転移がないかCTを行ったりします。
癌の大きさや転移の状況によって治療法が変わってくるためです。
喉頭がんの治療法(1)放射線治療
喉頭がんの大きさが小さく、他に転移がない場合は多くの施設で放射線治療が行われます。
放射線治療は通常1回の治療が10分ほどで、全部で30回ほど行います。
普通土曜日、日曜日は放射線治療を行わないため、週5回の放射線治療を6週間ほど行う事になります。
病院が自宅から近い場合は外来通院しながら治療することもできます。
小さい喉頭がんの場合は放射線を当てる範囲もせまい(のどぼとけの骨全体が入るくらいの範囲)のですが、治療が進むにつれて徐々に合併症が出てきます。
主な合併症は、粘膜や皮膚が炎症をおこして痛くなることです。うがい薬や鎮痛剤、軟膏などで治療します。
喫煙・飲酒は炎症を強くしますので治療が始まったら必ずやめましょう。
また、糖尿病の方も炎症が強くなるため、糖尿病の主治医とも相談しながら治療することが大事です。
早期の癌の場合、放射線治療の生存率は9割程度です。
喉頭がんの治療法(2)レーザー手術
早期の喉頭がんにレーザー手術を行う病院もあります。
全身麻酔で手術を行います。
口からのどに喉頭鏡という金属製の筒を入れ、顕微鏡でのどを覗ける状態にします。
癌の部分にわずかに正常の部分を付けてレーザーで癌を切除します。
治療期間が短いのが良い点ですが、治療後の声の質は放射線治療後に比べると少し悪くなります。
喉頭がんの治療法(3)化学放射線療法
ある程度がんが大きくなると放射線治療だけでは癌が消えにくくなってくるため同時に抗がん剤治療(化学療法)を組み合わせます。
化学療法は、多くの施設でシスプラチンやネダプラチンなどのプラチナ製剤にフルオロウラシル(代謝拮抗薬)を加えて行われます。
抗がん剤を加えると癌に対する効果も増加しますが、口内炎や粘膜炎といった合併症も出やすくなります。
時にモルヒネでないと取れない痛みが出てくるため、モルヒネを使用します。
モルヒネというとびっくりされる方が多いのです。
でも鎮痛には非常に効果的です。
医師の管理のもとで適切に使用すれば「頭がおかしくなる」「命が短くなる」「やめられなくなる」といったことはございません。
喉頭がんの治療法(4)喉頭部分切除術
安全に照射できる放射線の量は決まっていますので、がんが消えるまで放射線治療をやり続けるという事はできません。また、放射線治療を行った後かなり時間が経過してから再発した場合も、同じ場所には追加で照射を行う事はできません。
そのため、
- 放射線治療後に癌が残ってしまった場合
- 放射線治療で癌がいったん消えたように見えたが、その後再発した場合
- 化学放射線治療では勝ち目がないほど癌が進行してしまっている場合
では手術が行われます。
1、2で癌が部分的な場合は喉頭の一部を切除する喉頭部分切術除が行われることがあります。
部分切除術は手術後も声を残すために行いますが、手術後の声はあまり良い声の質ではありません。また飲み込む機能が悪くなり、手術後に誤嚥を起こしやすくなる危険があります。
ご高齢の方には勧めにくい手術法です。
喉頭がんの治療法(5)喉頭全摘術
放射線治療後に癌が残存した場合、
放射線治療後に癌が再発した場合、
かなり進行した喉頭がんの場合には
一般的には喉頭全摘術が行われます。
喉頭全摘術はのどぼとけの骨ごと取る手術です。
のどぼとけの骨の中には声帯も入っていますので、この手術をすると普通の声は出せなくなります。
口からのどまでは一本の管ですが、のどから先は気管と食道の2本に分かれます。
食べ物が気管でなく食道へ行くよう誘導する役割をしているのが喉頭です。
喉頭が無くなってしまうと食べ物が気管に入ってしまいます(誤嚥といいます)。
そのため喉頭を摘出した後、気管は首の皮膚に縫い付けて呼吸専用の穴(永久気管孔)とします。
口は食道だけにつながる事になるので誤嚥はおこりません。
喉頭全摘後に声を出す方法とは
喉頭全摘後は自分の声は失う事になりますが、声を出す方法もあります。
自然な声は生体の粘膜を振動させて発声させますが、声帯は失われているため他の部分の粘膜を振動させて発声させます。
- 1.食道発声法
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食道の粘膜をげっぷにより振動させて発声します。
習得には訓練が必要ですが、自然に近い声質です。歌を上手に歌える方もいらっしゃります。
各県に喉頭全摘をされた方の患者会があり、講習会があります。
- 2.食道-気管シャント
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食道と気管をつなぐ細い穴を作ります。
永久気管孔を押さえて息を吐くと、息が気管→気管と食道をつなぐ細い穴→食道に入るため食道発声を簡単に行う事ができます。
手術で気管-食道の穴を作る場合と、人工物を入れる場合があります。
食道発声が簡単に習得できます。しかし、発声時に永久気管孔を閉鎖させるために片手を必要とするので、話しながら両手を使う作業ができません。
- 3.人工喉頭
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振動する器具を首にあてて、咽頭の粘膜を振動させて声を出します。
習得は比較的簡単ですが機械的な声となります。また発声時に片手を使用します。
何が適切な発声法かは個人差があるため主治医とよく相談しましょう。